250. 午前四時、コウモリに出会う

奇妙な音に目を覚ます

夜、寝ていると、ふいに「ほぇぇぇー」という悲鳴のような音が聞こえた。

「なんだ、こんな時間に。気のせいかな?」

辺りを見回しても、暗くて何も見えない。

そうこうしているうちに、だんだん目が覚めてくる。意識がハッキリしてくると、トイレを我慢していることに気がついた。

「暗いのはこわいから・・・部屋の電気をつけて行こう」

そして用を済ませ、部屋に戻る。といっても、自分の部屋はトイレの目の前にあるので、すべて一瞬のことだが。

黒い物体が飛んでいる

明るい部屋に入ると、ふと足元に小さな影が見えた。動いている。

頭上を見上げると、何か黒い物体が飛んでいた。意外とでかい。

「うわー!」

蝶か、蛾か。いずれにせよ、でかい。

寝起きである上に、自分の部屋を黒い物体が飛び回るのを見て、発狂しそうだった。

相手も必死なのか、部屋の中空をものすごい速さで飛び回っている。

そのうち、

「あれ? 蝶や蛾なら電気に向かっていくはず。こいつは中空を飛び続けているし、でかいし、フォルムがコウモリっぽくないか?」

と、気づいた。

コウモリだろうが何だろうが、こわいものはこわい。

「え? え? うわー! うわあああああ!」

とにかく叫んだ。午前4時のことである。

1階に避難

そのうち目を覚ました母が、「どうしたの?」とやって来た。

事情を話すと、「じゃあドアを閉めて下で寝たら」ということになり、とりあえずその通りにした。

下の和室では、弟も起きていた。完全に目が覚めてしまったらしく、目がぱっちりと開いている。そして饒舌だった。

「お兄ちゃん、何が飛んでた? 蝶? 蛾? もしかしたら見間違いで、カブトムシだったかもよ~」

すると昨夜0時に眠りにつき、まだ4時間も寝ていなかった母が「眠いから静かにして」。

黒い物体の正体が気になるところだが、仕方がないのでまずは寝ることにした。

奇妙な音の正体

朝起きてみると、昨夜の謎の物体はいなくなっていた。

しかし部屋のドアを閉めて寝たので、おそらくまだどこかに隠れているはずだ。

朝ごはんを食べていると妹が起きてきた。夜の出来事を話していると、妹が「実は自分の部屋にもコウモリが来た」。

話を聞いてみると、午前2時過ぎのことだったという。びっくりして悲鳴を上げたようだ。

ということは、自分が聞いた「ほぇぇぇー」という音は、妹の悲鳴だったということか。

順序を考えると、まず妹の部屋にコウモリが来て、そして自分が電気をつけてトイレに行っている間に、自分の部屋に来た。

そういう感じだろう。

コウモリについて調べる

コウモリがどこへ行ったのかは気になるが、とりあえずそれは置いておこう。

そもそも、コウモリは危険なのだろうか?

調べてみると、「虫を食べてくれる益獣だが、糞に病原菌が多く含まれていたり、身体にダニやノミがついているので追い出すべきである」とのこと。

なるほど。それなら見つけ次第、追い出さねばなるまい。

それから、スピリチュアルの面ではコウモリにどのような意味があるのだろうか。

それについても調べてみたところ、「子宝に恵まれる」「子孫繁栄」といった意味や、「古いものを捨て新しい何かを始める」「自分の心の闇を見つめる」といった意味があるそうだ。

また、コウモリは超音波を出して反射してくる音から自分の場所など、様々な情報を得ている。

そのため、幸運な場所やいいエネルギーが流れる場所を見つける力もあるそうだ。

つまり、自分の部屋や妹の部屋に、いいエネルギーが流れているということなのだろうか。

実は以前にも会っていた

そういえば以前、佐世保に住んでいたときにもコウモリに遭遇したことがあった。

自分はほぼ忘れていたのだが、母や妹の話を聞いて思い出した。

約9年前、12歳年下の弟が生まれる前日、父と妹と自分の3人で家にいたところ、コウモリが現れた。

父が袋で捕まえて外に逃がしたのだが、そのときコウモリの顔を間近で見た。「ほんとにブタ鼻じゃん!」と大笑いしたのを覚えている。

その翌日に弟が無事に生まれたのだから、まさに「子宝に恵まれる」「子孫繁栄」。

コウモリに出会うと、本当に幸せが訪れるようだ。

これから何が起こるのか楽しみにしつつ、家の中に隠れているコウモリを発見したら、傷つけることなく追い出さなければならないな、と思った。

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