ある週末の1日のこと。天気が良かったので、おぬまは海に行った。
どの海へ行こう
海といっても、糸島にはいろいろな海がある。芥屋、野北、船越、加布里、深江・・・などなど。
どの海に行こうかとしばし迷ったが、何となく深江に行ってみることにした。
夜な夜な枕元に出てきていた人が「海にいる」というメッセージを残した(たぶん)ことも気になっていたので、海に行ったのにはそれを確かめる目的もあった。
深江の海へ
深江海水浴場に着くと、広い方の駐車場に自転車を止めて海へ向かった。
駐車場に観光バスが2台停まっていたのである程度の予想はしていたが、海にはかなりの人がいた。
その日が、天気の良い土曜日だったのもあるだろう。
砂浜を歩き、人が比較的少ない場所を選んで座り込む。
しばらく海をぼんやりと眺めていたが、やがてごろんと横になった。
短時間で状況が急変
どれくらい時間が経っただろうか。いや、たったの10分くらいだったかもしれない。
ふと目を開けると、周りで小さい子どもたちが3人くらい走り回っていて、背後ではその子の親たち(女性が2人だった、ママ友だろうか)がバーベキューをしていた。
「なんということだ。目の前でバーベキューが行われているとは・・・これは場所を間違えたな」
ここに着いたときには人はほとんどおらず、まさか10分後にこんな状況が訪れるとは思ってもいなかった。
だが起きてしまったことは仕方がない。さっさと去るのみだ。
・・・と思ったが、動くのが億劫だったので、その後30分くらいそこにいた。
しかも、だんだん陽射しが強くなり暑くなってきたので、上着を脱いでタンクトップ1枚の姿で、そこにいた。
落ち着ける場所を探して
実は、海で日に当たりながら瞑想がしたかったのだ。
しかし、バーベキュー親子の間近くでは、落ち着いて「無」になることは困難だった。
30分間、この難しい状況の中で精神統一を心がけたが、やはり厳しいので場所を変えることにした。
「よいしょ」と起き上がり、トボトボと西へ向かって歩く。
すると、海水浴場の端の方に岩場がある。
そこで止まらず、岩の上によじ登り、さらに奥を目指した。
どんどん進むと、目の前には岩と海、背後には崖・・・という絶好の瞑想スポットに辿り着いた。
それは絶好のスポット
この険しく寂しい場所には、他に誰もいなかった。
そもそも、人がむやみに来るような場所でもなさそうである。
「ここはいい。ここなら誰にも邪魔されずに落ち着ける」
座りやすそうな大きな岩を探し、そこに腰を落ち着けると、海と空を眺めながら瞑想を始めた。
このとき、昼の11時を過ぎたくらいだった。
その後しばらくすると、どんどん陽射しが強くなってきた。周囲に遮るものもないので、容赦なく熱い光が注ぎ込んでくる。
しかも岩がかなり高温になってきた。岩に触れている手足が「ジューッ」と鳴り始める。まるでフライパンの中にいるようだ・・・。
服が暑くなってきたので、タンクトップすらも脱いで上裸になった。
猛禽に狙われる
昼の12時を過ぎた。
日はちょうど真上にある。ふと大きな影が足元に映ったので、空を見上げてみると、かなり近くに猛禽がいた。
頭上に降りてくる気配だったので、しばらく息を殺していたが、間近に来たところで「ウワー」と叫び、暴れてみた。
すると猛禽は「!!・・・こいつ死んでなかったのか」とでも驚いたのか、急いで上昇して、消えた。
考えてみれば、高温になった岩の上に上半身裸で寝転がり、ぐったりしていたら食べ物に見えても不思議ではない。
「ああ、暑い・・・だけど、気持ちいいなあ」
太陽の恵みをいっぱいに受けて、おぬまは安らかに眠った。
(つづく)