おぬまが大好きな「アコースティックコーナー」が始まり、3曲目の「マラケッシュ」が終わったところで、2度目のMCの時間がやって来た。
待望の久留米弁コーナー
「それでは、ちょっとお水をいただきます」と言って水を飲む聖子さん。
そのうち、誰かが「久留米弁しゃべって!」とリクエストサインを出したのでしょうか、
「えー、久留米弁コーナーですか? もう?」
笑いながらも、聖子さんは
「いやぁーそいはちょっと早かっちゃない? まだ」とすでに久留米弁モード。
「暑かねえ~。そうそう、こん前大雨降っとったらしかけど、大丈夫やった?」
観客は、みんな「パチパチパチ・・・」と拍手で応えていました。
「あんの筑後川のさ、よく氾濫するけんさ、大丈夫かな~と思っとったけど」
次第にヒートアップしてくる聖子さん。
目を見開いて周りを見渡しながら、
「やっぱ久留米弁の抜けんもんね。歳とると特に。」
「ほら、テレビの収録とかでさ、ほかん人と『暑いですね~』って東京弁でしゃべりよっても、
角とかで足ぶつけたら『あ、いたぁ~す』っていうもんね、私。」
と、身ぶり手ぶりを交えながら、ものすごい勢いでまくし立てていました(笑)
久留米弁は続く
「いやーほんと、前の方の人のさ、『聖子ちゃん還暦おめでとう』ていうてくれとるばってん、ほんなこつあっという間やったよ~。
17で上京したんやけどさ、気づいたらもう60やけん。あっという間よ。」
会場内で笑い声が聞こえてくると、「いやいや、笑いごとじゃなかよ」と大まじめに言っていました。
本当にあっという間だったのかどうかは、自分が同じように60歳くらいにならないと実感できないものですが、
10歳の頃の自分と、20歳の今の自分の時間感覚の差を考えれば、たぶん60歳にもなると「毎日があっという間」なんじゃないかな~と思います。
さて、聖子さんが
「うしろの(演奏者の)人たちのさ、『こん人何ばいいよっと~』って顔しとるけどさ、もうずっとこのまま久留米弁で行く?」
とふざけて言うと、会場もそれに乗って大きな拍手を送りました。
聖子さんはうれしそうな顔で会場を見渡していましたが、
「でもさ、こん次の曲のさ、久留米弁に合わんと思うんよね。やけんごめんけど、東京弁に戻すね」
「そういえばさ、まだアコースティックコーナー続いとっとよ。知っとった?」
目を見開いた聖子さんの姿に、笑いに似た大拍手が起こりました。
僕などは「忘れとった!」とつい言いそうになってしまいました(笑)
まだアコースティックコーナーは続いていたのか!!
水ばもらうけん
「じゃ、ちょっと水ばもらうけん」と水を飲んだあとで「何で水ばて言うとやろうね?!」とまたもや目を見開き、会場内は大拍手。
あちこちでささやかな笑いも起こっていました。(声出しが禁止されていたので、みんなこらえていた)
「東京じゃ『水を』やろ? 何でこっちは『水ば』て言うんやろうか?」
たしかに、謎ではありますね~。
「ば」の方が強い響きがあり、「を」よりも明快に語と語を区切っているので、
僕は「ば」の方が好きです。使ったことはありませんが・・・。
SEIKO JAZZから1曲
しばらく「何で『水ば』なのか?」を一人で考えていると、
聖子さんは水を飲み終わったのか、マイクを口に近づけました。
「お、いよいよ次に行くみたいだな」
そう思って見ていると、
「はい。それでは次に行ってみましょう」といきなり標準語(聖子さん曰く「東京弁」)に戻ったので、びっくりしました。
顔つきも、さっきまでとはどこか違っています。
その豹変ぶりに、会場はまたも沸き返りました。
声出しが禁止なので、大口を開けて笑えないのがつらいところ。・・・
「みなさん、『SEIKO JAZZ』というアルバムを知っていますか?」
パチパチパチ・・・(拍手で応えている)
「ありがとうございます。そのアルバムの中で、2017年のツアーで歌わなかった曲があるんですけど、
とってもいい曲なので、歌わせていただきますね」
パチパチパチ・・・
その曲は「スマイル」という名で、歌唱と演奏の妙が相まって、ステージの上は、さながら夜の喫茶店のようでした。
「SEIKO JAZZ、いいなあ」
その歌声にはきっと、聖子さんがもっている様々な記憶や感情が込められていたことでしょう。
歳を重ねなければ出せない色もあるんだな、としみじみと感じました。
(つづく)
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