日中、雨が降り続いていたせいだろうか。
夜、日付が変わる時刻になっても、晴れの日の昼間のようにセミが鳴いていた。
「セミって、夜にこんなに鳴くものだったか・・・?」
昼ならまだしも、夜にそのペースで鳴かれると、なかなか眠れない。
「静かな夜を返してくれ、セミよ・・・」
なかば悲痛な思いで、庭の木で鳴くセミに祈りかける。
そうすると、思いが天に通じたのか、まもなくして大粒の雨が降り始めた。
「お、良い感じだ。セミも鳴き止んだかな?」
そう思い耳をすませてみると、どんどん雨が激しくなっていくにも関わらず、相変わらずセミは鳴いているようだった。
雷が雨のように落ちていく悪天候の中でも、懸命に鳴くセミたち。その姿は健気であり、「眠れないから静かにしてくれ」というのは失礼な気がしてきた。
そして、こうつぶやく。
「セミよ、その調子で昼も夜も元気に鳴いてくれ!」