223. 歩くおぬま(3)

2023年1月7日の記録 ~歩いて自宅から九大へ・後編~

南風台の自宅から、歩いて九大まで行ってみた。

今回は、「太郎丸東」の交差点に差しかかったところから、大学に辿り着き、そして家に帰るところまでお話ししていく。

空腹の中、行進

時刻は13:40くらいだったと思う。

ここまでかなり歩いてきたので、おぬまは空腹を覚えていた。

しかし依然として適当な休憩スポットが見つからないために、とりあえず目的地の九大を目指して歩き続けた。

太郎丸東の交差点を左折して、九大前通りに入る。

少し歩いたところで左手に岸辺が見えたので、「川でも見ながら休憩しますかねー」と草を踏んで川に近づいてみたが、

水際に近づくと、すさまじい勢いで冷たい風が体を襲ってきたので、たまらず退散。

「ひー、こんな寒い日に川に近づくもんじゃないな」

やれやれ。

西消防署前で栄養補給

元のように九大前通りをひたすら歩いていくと、やがて西消防署が道の反対側に見えてきた。

「おお、ここまで来たか」

都合よく辺りにはバス停があったので、そこのベンチに腰掛けて軽食を取った。

時計を見ると、14:00を過ぎていた。

もはや空腹も限界のところまで来ていたようだ。

一度食べ始めると、それまで我慢していた食欲がどんどん増進してくるものと見えて、

1本だけ食べるはずだった、業務スーパーで買った「デーツバー」を2本食べた。

3本あった食料は、残り1本になってしまった。

トイレを目指してセンターゾーンへ

寒さもあってか、おぬまはまたトイレに行きたくなった。

当初の目的地であったイースト1号館は、距離が遠い上に途中で坂道を上らなければならない。

そこで、一番近いセンターゾーンのトイレをひとまず目指すことにした。

センターゾーンの空き教室で

いつもは人が多いセンターゾーンも、1月7日となるとほとんど人の気配がなかった。

おぬまが遭遇したのはせいぜい2人くらいのもので、もはや無人といってもよかった。

さて、無事にトイレを済ますと、寒さをしのぐために近くの空き教室に入ることにした。

センターゾーン1階の教室をのぞいてみると、意外なことに5、6人の集団が教室内でクイズゲームのようなことをやっていた。

「こんな日に、大学に集まっている連中もいるのか」

新鮮な驚きとともにドアを閉め、静かな2階に移動。

この階には誰もいないようだった。

一番手前の教室に入ると、自分が使うスペースの電気だけつけて、席に座る。

とても静かで、何か作業をしたら捗りそうだったので、持ってきたパソコンを開く。

この教室の中で、ブログを1本とYouTubeの動画を1本完成させた。

その後、少し暇になったので正月におじいちゃんからもらった囲碁のソフトを開いてコンピュータ相手に一局打ってみた。

長いこと歩いたので脳が活性化されたのか、いつもよりも短時間で勝負がついた。51目勝ちだった。

碁を打ち終わると、寒気を感じたので部屋の暖房を半分だけ入れた。

少しお腹が空いたので、残り1本だけになっていた「デーツバー」を頬張った。

寒いし、眠い・・・

暖房を入れて、1時間くらい経った。

ところが部屋が広いためか、人数が少ないためか、あるいはその両方が原因なのか、まったく暖かさを感じられなかった。

「う~、寒いし、眠いなあ・・・」

長時間、椅子に座ったままじっとしていたので、次第に寒気はひどさを増してきた。

外に出てまた歩き出せば、また違ったのだろうが、計2時間くらい室内にいたために、完全に体の動きが鈍くなっていた。

いったん安逸を覚えると、そこから抜け出すのにかなりの覚悟がいる。

寒くて眠い教室内は決して天国ではなかったが、少なくとも室外の寒風にさらされるよりはマシであるように思われた。

何となく家族LINEに「寒いし眠いよー」と送ってみたところ、お父さんが「大丈夫?迎えに行こうか」と返してくれたので、

お言葉に甘えて迎えに来てもらうことに。

お迎えを待つおぬま

まず教室内で10分待ち、それから外に出て集合場所に移動して10分ほど待っていた。

集合場所であるITRI ITO前の守衛室から、小さな丘が見える。

そこに登ったら気持ちがいいだろうなと思い、待っている間に登ってみた。

たしかに見晴らしはよかったが、そのぶん風も強く吹きつけてきたので、少し景色を楽しんだあと下りた。

じっとしていると寒いので今度は別の高地を目指して歩き、登ってウロウロしていると、銀色の車が交差点をこちらに曲がってくるのが見えた。

それが、おぬまの待つ「お迎えの車」だった。

運ばれるおぬま~快適さと虚しさの中で~

「ありがとう~」と言って車に乗り込む。

歩いていたときとは違って、車の中から見える景色はすべてが一瞬一瞬のうちに過ぎ去ってゆく。

そこに快適さを覚えつつも、どこか虚しさを感じずにはいられなかった。

文明の利器によって人々は利益を得るが、その反面、何か大切なものを失っているのかもしれない。

この日、家から大学まで2時間かけて8キロ近く歩いたおぬま。

そこには困難もあったが、それ以上に景色を楽しんだり自分の人生について考えたり、有意義な側面も大きかった。

たまには車や自転車の助けを借りずに、自分の力で歩いてみるのも悪くない。

(「歩くおぬま(3)」終わり)

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