(前回までの流れ)まばゆい光とともに、コンサートが始まった。聖子さんは歌だけではなくギター、ドラム、踊りなどにも挑戦し、それぞれ素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。コンサート8曲目は神田沙也加の「ever since」。歌が終わると、MCの時間が始まった。
すすり泣く人々
「ever since」の歌唱の後に始まったのは、MCの時間。
そこで聖子さんは、はじめて娘の神田沙也加さんの話をしました。
僕の後ろに座っていた女性は泣きはじめ、
しばらくすると会場全体からすすり泣く声が響いてきました。
聖子さんがその話の終わり際に「今日も、沙也加がここに来て一緒に『ever since』を歌ってくれていたかもしれません・・・」と言うと、
僕の後ろの席の女性の泣き声は、いよいよ高くなりました。
そしてステージ横にあるスクリーンに聖子さんの顔が大きく映り、
「沙也加はいつまでも、私の心の中で・・・生き続けています」
と言いながら笑顔を作っているのが見えましたが、
無理をして笑っているのは明白で、見ていて辛くなりました。
「それにしても」と、僕は会場を見渡しました。
「ここまで悲しみに包まれてしまったコンサートを、いったいどうやって再び盛り上げるのだろう?」
そのときの僕は、かすかな不安を拭えませんでした。
すばやい立ち直り
しかし、僕の心配は杞憂に終わりました。
次の瞬間こそ、聖子さんはまだ悲しみを残している様子でしたが、
「さあそれでは、アコースティックのコーナーに行ってみましょう!」
と明るく言ったときには、少なくとも見かけ上は、聖子さんの表情の中に悲しみはひとつも見当たりませんでした。
「アコースティックコーナー」は、コンサート最序盤の騒がしい感じとは打って変わって、しんみりじっくり聴かせてくれるので、
僕はこのコーナーが大好きです。
このコーナーの第一曲目は、「とんがり屋根の花屋さん」。
コンサート後しばらく、僕がすごくハマっていた歌です。(今も好きです)
聖子さんによると、この曲はレコーディング以来一度も歌ったことがないのだそう。
それを生歌で聴けるなんて、すごくレア・・・!
哀愁漂う「風立ちぬ」
「とんがり屋根の花屋さん」の次は、「風立ちぬ」。
この曲は、原曲では壮大な伴奏とともに歌っており、時折「なんか違うんだよなあ」と思うことがあったのですが、
アコースティックコーナーで哀愁を漂わせて歌っているのを聴いて、
「あ、これだよ、これ!」としっくりきました。
どうやら「風立ちぬ」には、物寂しい感じが似合うようです(個人の感想です)。
この曲も「アコースティックコーナーでは歌ったことがない」と聖子さんは言っていました。
マラケッシュ
アコースティックコーナー3曲目は「マラケッシュ」。
この曲は数回しか聴いたことがなかったのですが、
アコースティックコーナーに合う曲だな~と思いました。
ちなみにマラケッシュというのは、北アフリカのモロッコにある町で、
昔、「ムラービト朝・ムワッヒド朝」という、ベルベル人の王朝の首都だったことがあります。
世界史の授業でその王朝の存在について習ったときは、「マラケッシュ」ではなく「マラケシュ」と教わりましたが、
当時高校生だった僕は「ムラービト朝」という王朝の名前も、「マラケシュ」という地名も面白くて思わず笑ってしまった記憶があります。
二度目のMCへ
アコースティックコーナ―も3曲目が終わると、コンサート会場はだいぶ盛り上がってきました。
その空気を読み取ったのか、それとも最初からそういう段取りになっていたのかはわかりませんが、
「マラケッシュ」が終わったところで、聖子さんは2度目のMCを始めました。
さて、次はどんな話があるのでしょうか。
楽しみですね~。
(第4話に続く)
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