95. おぬまの日々 vol.1

~これは、糸島に住む大学生・おぬまの ときに平凡で、ときに壮大な 物語である~

2021年11月2日、火曜日。

おぬまは朝7時ごろに目覚めた。しかし、「まだ眠い」と言いながら布団にもぐりこみ、そのまま3時間眠り続けた。

前日の夜は23時半くらいに眠りについたので、計10時間半も眠っていたことになる。

寝すぎて凝った肩をほぐしながら、朝食をとる。

いつもは朝を共に過ごすあくびも、今朝はほとんど出てこない。

朝食は昨夜炊いた白米と、鶏肉と玉ねぎの炒め物。ちょっと玉ねぎを焦がしてしまったが、それがかえってうま味を引き出しているらしい。

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朝食を食べ終わると、皿洗いをしながらトシちゃん(田原俊彦)の歌を聴き、そして踊る。これはもはや、日課となりつつある。

さて、今日は13時からドイツ語の授業が対面で行われる。

実を言うと、今日はドイツ語の授業(3限目)しかない。5限目(16:40~18:10)に心理学の授業が入っているのだが、オンデマンドなのでそれはいつでも受けられる。

そこで、ドイツ語が終わったらそのまま真っ赤なバスに乗って自動車学校に行く予定になっていた。

車校の話は後に譲るとして、まずはドイツ語の授業。

今までの経験上、30分前に家を出れば十分間に合う。そう思っていると、いつの間にか20分前になってしまった。

おぬまは書きかけのブログ「94. 仮免合格!(下)」の編集画面を閉じると、急いで仕度をして家を出た。

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道に出ると、今日はいつになく風が強い。

「あと20分しかないのに、この強烈な向かい風をどうしたものだろう」

おぬまは少し考えたが、この場合「がんばって漕ぐ」以外に妙案などありそうになかった。

ギアを12速に入れ、おぬまは足の指の付け根で力強く漕ぎ始めた。

風が強い。

頭に浮かぶのは、それだけだった。

ふと前方を見渡すと、同じ道路上をバイクが蛇行しながら走っている。

何をしているのか、こんなときに。そんなに体を傾けていたら、風圧でこけてしまうのではないか? おぬまは思った。

しかし、そのバイクがいたあたりまでやって来てようやく、蛇行の理由が分かった。

路上に、牛のフンだか土だかわからないが、茶色い塊が大量に落ちていたのだ。

あのバイクは、この茶色い障害物をかわそうとしていたのだろう。だが、それは多すぎて避けられるものではなかった。

おぬまは直進した。ひたすら漕いだ。

スピードメーターを見ると、すでに時速30キロを超えている。風圧がどんどん大きくなり、耳の中にまで風がごうごうと入ってきた。

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この分なら、授業には間に合うだろう。しかし、その前に体力が尽きてしまうのではないか。

あるいは、時間通りに教室に辿り着けたとして、疲労で居眠りしてしまうのではないか。

さまざまな思いを乗せたまま、おぬまの自転車は走ってゆく。

(つづく)

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