こんにちは、おぬまです。
前回は、「3番目の子」の技能試験に同乗し、
試験後にその子が教官から厳しく何かを言われているのを聞いて「大丈夫か?」と心配になったところまで、お話ししたと思います。
しばらく車内で息をひそめて待っていると、「次の方、いいですよー」と車外から声をかけられました。
僕は「とうとう来たか」とつぶやきながら、一旦車を降りました。
それまでは後部座席に座っていたので、運転席に改めて座り直す必要があったのです。
順序をど忘れ
僕が運転席に座る前に、まず3番目の子と教官がそれぞれ後部座席、助手席に乗り込みました。
そして僕は教官の合図を待って運転席に乗り込みました。
まずはドアを閉めます。
3番目の子は思いきりドアを閉めており、そのとき教官が顔をしかめていたのを僕は見逃しませんでした。
なので、ことさらに慎重に閉めました。
そしてドアロック。続いてシートやルームミラーを調節して、シートベルトを締めました。
そして、ブレーキを踏みながらエンジンをON。ところが回し足りなかったのか、「エンジンかかってませんよ」という声が横から飛んできました。
「準備ができたらいつでも発進していいですよ」と言われていたものの、緊張感が高まってきてなかなか発進できません。
まず、「あれ、チェンジレバーとハンドブレーキ、どっちが先だったっけ」と緊張で記憶が消し飛んでしまい、しばらくキョロキョロ。
ちらと教官の顔を見ると、「いつでもいいですよ」
僕は心を落ち着けようと、ひと呼吸おきました。
「確かハンドブレーキは発進直前だったな。じゃあチェンジレバーが先か」
そこが決まればもうあとは大丈夫。僕は右合図を出したあと体を大きく動かして後方を確認し、発進しました。
合図が消えない!
1番の交差点を左折し、その次の信号は直進。カーブを抜けたら障害物があるので、ミラーと目視で安全確認をしながら進路変更。
と、ここまではうまくいきました。
ところが、障害物を避ける際に「右合図→左合図」と出したあと、そのまま直進となるので自分で合図を切らないといけませんでした。
まず、左合図を消すために方向指示器を下向きに押したのですが、力が強すぎたのか右合図が出てしまいました。
あわてて上向きに指示器を戻そうとしましたが、またまた力が入りすぎていて左合図が出ました。
次のカーブまで距離がないので、早く合図を消したいところ。
それに、合図の消し忘れは検定の減点対象でもありました。
僕はカーブに入っても何度か「右合図、左合図、右合図」と繰り返し、踏切が見えてくる前にようやく、合図が完全に消えました。
助手席の方からは軽い咳払いとともに「カリカリ」と何かを書き込む音。
ああ、さては減点されたな・・・
キズが広がっていく
合図のことで少しもやもやしていると、すぐに次のポイントに差しかかりました。
それは、勾配の急な下り坂。もちろんローギアに入れることは、忘れていませんでした。
ところがそのあとが問題。緊張のあまり、僕はローギアから元のギアに戻すことを忘れてしまっていました。
勾配の急な上り坂で「グオーン」とエンジンがうなりを上げていたので、「?」と少し疑問に思いましたが、アクセルを強く踏むことで対処しようとしました。
ところが全然速度が上がらず、「あれー」とつぶやいていると、「ギアがローのままですよ」
「あ」と急いで戻し、対面する信号が赤だったので停止線の直前で停まりました。
青になったので右折しようと思いましたが、直進車がいたので停まったままでいると相手はなかなか進みません。
それどころか、そのうち完全に停止してしまいました。
「あれおかしいな、直進優先じゃないの?」と考えながらボーっとしていると、「だから、さっきから譲ってますよって」と教官の声。
「あ、そういうこともあるのか」と思って発進。
よく考えると、あちらは普通の教習車で、こちらが仮免試験中だったので、譲ってくれたのかもしれません。
とにかく、小さなところでじわじわと失点を重ねているような気がしてなりませんでした。
普段の教習ではそこまで気にならない些細なことでも、仮免試験中はものすごく応えました。
脱輪しちゃった!!
そんなとき、とてつもなく大きな衝撃が僕を襲いました。
何と、クランクで脱輪してしまったのです。
技能試験(修了検定)は最初に1人100点の持ち点が与えられ、特定のミスをするたびに決められた点数分減点されていき、
最後に70点以上残っていたら合格するという仕組みでした。
脱輪は、1回でマイナス20点。
つまり、もし2回脱輪したら即終了。(修了ではありませんよ)
脱輪する前から小さなミスを重ねていた僕にとって、これは相当手痛いミスでした。
なぜ、脱輪してしまったのか。
そもそも僕がこの自動車学校で脱輪したのはこれが2回目でした。
初めて脱輪したのは、仮免試験前の最後の教習。いわゆる「みきわめ」というやつです。
そのときもクランクで、場所は仮免のときとほぼ同じでした。
僕はおそらく、そのときの記憶をずっと引きずっていたのでしょう。
初脱輪の教習の次がすぐ仮免でしたから、練習して修正をかけることもできずに本番に突入せざるを得なかったということになります。
しかも、みきわめから仮免までまる1週間の間が空いていました。
そういった種々の出来事が、僕に「クランクだ・・・この前脱輪したな・・・今度は絶対したくない・・・」という気持ちを抱かせていました。
その強い気持ちが、逆に脱輪を引き寄せてしまったといえるかもしれません。
あきらめるな!
さて、脱輪した瞬間、僕は「たしかこのまま通過したら検定中止だったな」と思い出し、とりあえずブレーキをかけて停止しました。
そして深呼吸してからギアをリバースに入れ、「やり直し」を開始。
しかし、テンパっているのでやり直しの正しい方法を思い出せません。
ハンドルを回さずにそのまま後退すればよかったのですが、僕はやみくもにハンドルを右に左に回しました。
もう、やぶれかぶれでした。「よーし」とつぶやきながら、自信満々の表情を作ることだけは忘れませんでした。
一瞬、「たしか次仮免受けるとしたら11月14日だったな」という考えが脳裏をよぎりましたが、
「いやいや、まだ終わったわけじゃないし。あきらめるな!」と自分を叱咤激励しました。
修了検定は終了
その後外周を1周ほど走ってから、技能試験は終了。
僕は発着点まで走行し、左合図を出しながら徐行していき、
1番の発着点に停車。
最後にハンドブレーキ→チェンジレバーと操作して、エンジンをOFFにしました。
そして教官に誘われるがままに歩いていき、アドバイスなどをいただきました。
「おぬまさん、クランクは苦手?」
「あー・・・前回の教習で脱輪したのがトラウマになってて」
僕は正直に話しました。
「クランクね、最初の入りはよかったのよ。だけど、そのあと1つ目の曲がり角でハンドルを切るのが遅かったから後輪が脱輪しちゃったわけ」
・・・なるほど~
言われてみれば、緊張で手汗が少し出ていたためにハンドル操作がいつもよりしにくかった気がします。
もっとも、前に運転した「3番目の子」の手汗が残っていたのもあるかもしれないですが・・・
果たして、結果は・・・
一通りのアドバイスを受けた後、「じゃあ待合室でゆっくりしとってください」と言われたので「はーい」とその足で待合室まで歩きました。
そこで、「あ、シート元に戻してなかった」と気づきましたが、もう遅い。
3番目の子にそのことを話すと、「ああ、僕も忘れてたから大丈夫だよ」
・・・いや、たぶん大丈夫ではないと思うけど。。
合否がわかっていない段階では、小さな問題に関しては誰の行動が一番正しかったのかなどは容易にわからないものです。
それは、大学入試のときも同じだった気がします・・・
ひとまず、技能試験が終わったので少しくつろいでから学科の勉強に入りました。
しかし、結果が気になる状況ではなかなか身が入らず・・・
こういうときの心理は、正直言ってあまり気持ちの良いものではありませんね・・・
僕はただ「クランクの脱輪とそのあとのやり直しは気になったけど、あとはしっかりやれてました」という教官の言葉を反芻していました。
(つづく)
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